ステロイド外用剤の強弱の分類と基剤の特徴
ステロイドの強さは、ストロンゲスト(最強)、ベリーストロング(かなり強力)、ストロング(強力)、マイルド(中等度)、ウィーク(弱い)の5段階に分けられています。
長期連用による局所の副作用に注意し、小児・高齢者・妊婦などは慎重に使用します。
年齢、疾患の重症度、部位に応じ使い分けます。
顔面、頸部、腋窩、陰股部は皮膚が薄く、副作用を生じやすいので、効力の弱いものを用いたり、塗布回数を減らすなど工夫します。
強力なものは多量または長期使用で、皮膚萎縮、口囲皮膚炎、酒さ用皮膚炎などの局所副作用や副腎機能低下などの全身作用が問題になります。
主なステロイド外用薬の分類と使い方
強さ | 成分名(濃度) | 商品名 | 一般的な使い方 |
---|---|---|---|
Ⅰ群 ストロンゲスト (最強) |
最も吸収されやすい成分を使用。含まれる成分量は少ないが、作用が強いため原則として子どもには処方されない。連続使用の場合、大人で1週間以内を目安に。 | クロベタゾールプロピオン酸エステル(0.05%) |
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ジフロラゾン酢酸エステル(0.05%) |
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Ⅱ群 ベリーストロング (かなり強力) |
大人では体幹部、子どもでは腕や足など四肢に処方されることが多い。大人の場合、連続使用は1週間以内、子どもの場合は数回に。 | モメタゾンフランカルボン酸エステル(0.1%) |
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ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(0.05%) |
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フルオシノニド(0.05%) |
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ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(0.064%) |
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ジフルプレドナート(0.05%) |
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アムシノニド(0.1%) |
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ジフルコルトロン吉草酸エステル(0.1%) |
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酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(0.1%) |
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Ⅲ群 ストロング (強力) |
大人への処方は全身~体幹部限定、子どもの場合は顔や陰部を除く体幹部。連続使用は大人で2週間以内、子どもで1週間以内に。 | デプロドンプロピオン酸エステル(0.3%) |
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デキサメタゾンプロピオン酸エステル(0.1%) |
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デキサメタゾン吉草酸エステル(0.12%) |
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ベタメタゾン吉草酸エステル(0.12%) |
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ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(0.025%) |
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フルオシノロンアセトニド(0.025%) |
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Ⅳ群 マイルド (中等度) |
大人・子どもともに、顔を含めた全身に処方される。連続使用は、大人は2週間以内に、子どもは1~2週間以内に。 | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル |
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トリアムシノロンアセトニド(0.1%) |
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アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(0.1%) |
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クロベタゾン酪酸エステル(0.05%) |
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ヒドロコルチゾン酪酸エステル(0.1%) |
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Ⅴ群 ウィーク (弱い) |
ステロイド成分は体に吸収されにくいものの、含まれる量は多いので安心できない。薬を最も吸収しやすいお尻や陰部にも処方される。連続使用は、大人も子どもも2週間以内に。 | プレドニゾロン(0.5%) |
|
部位別の使い分け(吸収率の差)
使用する部位を考慮するのは、薬の吸収が部位によって大きく異なるためです。顔や首など皮膚の薄いところは吸収率が高く、手や足などこ皮膚が厚い部位では低くなります。
また、乳幼児は吸収率が高く、高齢者も皮膚が薄くなっているので薬がよく吸収されます。そのため、どちらも弱めの薬を使用します。
ステロイド外用薬の部位別の吸収率
腕の内側の吸収率を1とした場合の各部位の吸収率です。数値が高いほど吸収率が高いことを意味します。
- 頰(ほお)
- 13.0
- 額(ひたい)・首
- 6.0
- 頭
- 3.5
- わきの下
- 3.6
- 腕の外側
- 1.1
- 腕の内側
- 1.0
- 手のひら
- 0.83
- 背中
- 1.7
- 陰部
- 42.0
- 足首
- 0.42
- 足の裏
- 0.14
ステロイド薬物療法の基本例
十分な効果が認められない場合はステップアップをし、十分な効果が認められた場合はステップダウンします。最重症時、経口ステロイドを使用する場合は原則として一時入院をし、専門医と連携を取りながら使用します。
軽症
- 外用薬
- 保湿・保護を目的とした外用薬
- ステロイド外用薬
- 全年齢:必要に応じてマイルド以下
- 内服薬
- 必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬
中程度
- 外用薬
- 保湿・保護を目的とした外用薬
- ステロイド外用薬
- 2歳未満:マイルド以下
2~12歳:ストロング以下
13歳以上:ベリーストロング以下
- 内服薬
- 必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬
重症
- 外用薬
- 保湿・保護を目的とした外用薬
- ステロイド外用薬
- 2歳未満:ストロング以下
2~12歳:ベリーストロング以下
13歳以上:ベリーストロング以下
- 内服薬
- 必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬
最重症
- 外用薬
- 保湿・保護を目的とした外用薬
- ステロイド外用薬
- 2歳未満:ストロング以下
2~12歳:ベリーストロング以下
13歳以上:ベリーストロング以下
- 内服薬
- 必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬
必要に応じて一時的に経口ステロイド
(使用する場合には、入院の上、専門医と連携を取りながら使用する)
外用基剤の特徴
外用剤は基剤と主剤の(薬剤)からなり、基本的には軟膏を用いますが、病変のタイプにより異なる基剤にしたり、皮疹の症状の変化により外用剤を変更します。
外用剤共通の副作用として、刺激、赤み、かゆみなどのかぶれ症状があります。
基剤、主剤いずれもがかぶれの原因となります。
塗布中にかぶれなどの症状が出現した場合は、外用剤を中止し適切な処置をします。
基剤の種類 | 基剤成分 | 長所 | 短所 |
---|---|---|---|
軟膏 (油脂性基剤) |
ワセリンが主 |
|
|
軟膏 (水溶性基剤) |
マクロゴールが主 |
|
|
クリーム (水中油型 O/W型) |
親水軟膏・バニシングクリーム |
|
|
クリーム (油中水型 W/O型) |
吸水軟膏・コールドクリーム |
|
|
乳液状ローション | 水中油型(O/W型) 水相部分が大 |
|
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溶液型ローション | 溶解液(アルコール類と水が主) |
|
|
ゾル | 粘稠性のある溶解液、コロイド製剤 |
|
|
ゲル | ヒドロゲル網目構造を膨潤させている溶媒が水 |
|
|
リオゲル(FAPG)水相を欠く |
|
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エアロゾル (スプレー型) |
主として水、アルコール類による溶解液の噴霧剤 |
|
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テープ | ポリエチレンフィルムにステロイドを含有した樹脂粘着剤を使用 |
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