虫歯予防とフッ素

公開日: : 最終更新日:2016/03/24 歯科

健康で白い歯を持つためには、常日頃から「自分の健康は自分で守る」ことを意識して心がけることが大切です。
お口の健康を保つためには、何をおいても歯磨きをしっかりと行うことが重要です。虫歯を予防するためにも歯磨きは欠かすことができないものですが、どんなに頑張っても、口内の歯垢を全て除去することは不可能です。
また、歯磨きがうまくできない乳幼児には、それを補うものが必要になります。
虫歯予防効果を発揮するフッ化物の応用について、その効果を解説します。

Q:フッ化物(フッ素)とは?

A:フッ化物は自然界に広く存在する物質で、虫歯予防に役立ちます。

フッ化物は、炭素や酸素と同じように広く自然界に存在する元素の1つです。土や海、大気中などに広く分布し、魚介類や肉類、野菜などの食品にも含まれています。また、歯に良いとされる緑茶の葉にも多く含まれていて、私たちは毎日これらの食品からフッ化物を摂取しています。
歯科分野では、欧米での調査からフッ化物利用の歴史が始まり、1945年に米ミシガン州で水道水にフッ化物を1ppmになるように添加するフロリデーションを開始したところ、子どもの虫歯は半減しました。その後、多くの研究結果から、フッ化物は有益な虫歯予防法の1つとして浸透してきました。日本でも、歯磨剤などに配合されています。

フッ化物の含有量

1,000g中のフッ化物量(単位:mg)
地中 280
25.9
海藻 2.3~14.8
牛肉 2.0
さとう 1.7~5.6
1.5~1.7
じゃがいも 0.8~2.8
緑茶(浸出液) 0.1~0.7
りんご 0.2~0.8

Q:効果的な虫歯予防の方法は?

A:「食事」、「歯磨き」、「フッ化物の使用」が重要

飲食後、口腔常在菌(ミュータンス菌ほか)が糖質を分解して有機酸を産生します。この有機酸が産生されると、口腔内の pH が酸性になりエナメル質を溶かし、カルシウムなどのミネラル成分が溶け出して脱灰が進み、虫歯になります。
虫歯予防のポイントは、次の3点が挙げられます。

① 食事:間食の回数を少なく糖質を控えめに

間食の回数が多くなると口腔内が酸性の時間が長くなり、脱灰が進行しやすくなります。
さらに、甘いものや糖質を多く摂取すると、口腔内細菌の酸の産生活動が活発になるため、虫歯になりやすくなります。

② 歯磨き:食物かすを残さない

歯垢は虫歯の大きな要因です。食後や寝る前には、歯磨きをしましょう。

③ フッ化物の使用:継続して使用

フッ化物は、3つの作用で強い歯をつくり、虫歯を予防します。
フッ化物の使用は、虫歯予防に効果的ですが絶対的ではありません。食生活のコントロールと適切なブラッシングで、虫歯予防効果を高めます。

Q:フッ化物による虫歯予防のメカニズムは?

A:フッ化物には、強い歯をつくり、虫歯を予防する3つの作用があります。

フッ化物の虫歯予防効果として、次の3点が挙げられます。

① 再石灰化促進と脱灰抑制

口腔内に低濃度(0.1~0.3ppm)のフッ化物が存在すると、再石灰化を促進し、失われたミネラルをすみやかに回復させることができます。
再石灰化した部分は、結晶性が向上していることにより脱灰されにくくなります。

② 歯質強化

フッ化物はエナメル質に取り込まれ、ハイドロキシアパタイトを耐酸性に優れたフルオロアパタイトに変換します。

③ 虫歯の原因菌による酸産生の抑制

フッ化物は、口腔内細菌の有機酸を産生する能力や生活能力を抑制します。酸の産生が抑制され、口腔内環境が改善されます。

Q:フッ素濃度が低い歯磨剤にも虫歯予防効果はある?

A:フッ化物配合歯磨剤は、フッ化物濃度よりも回数や使い方が重要です。

  • フッ化物濃度を100ppm、250ppm、500ppmとして週5回の洗口を行った結果、どの濃度でも高い虫歯抑制効果が認められました。
  • 虫歯予防では口腔内に低濃度のフッ化物が存在することが重要です。
  • 高濃度のフッ化物が配合されていても、使用後は何回も口すすぎをすれば、口腔内にフッ化物がほとんど残らないために予防効果は低くなりますが、100ppmと低濃度のフッ化物配合製品でも、使用後の吐き出しが不要であれば、虫歯予防に必要なフッ化物が口腔内に残りやすいため予防効果は高くなります。

フッ化物配合の口腔ケア製品

種類 フッ化物洗口剤 フッ化物配合歯磨剤 歯科用フッ化物スプレー
剤型 溶液 ペースト状、ゲル状、
液状、泡状など
液状
フッ化物濃度
  • 225ppm(週5回法)
  • 450ppm(週2~3回法)
  • 900ppm(週1回法)
1,000ppm以下 100ppm
使用方法 1分間の洗口後、吐き出し 歯磨き後に口すすぎ 歯磨き後に歯に行きわたらせる
対象 吐き出しができるように
なってから(4歳頃~)
吐き出しができるように
なってから(4歳頃~)
乳歯生え始めから
使用場所 自宅、学校など 自宅 自宅
特徴
  1. 学校など集団で実施可
  2. 安価
  3. 入手方法が限定される
    (歯科医院で購入
    または処方箋要)
  4. 調整後の管理に注意要
  1. 自宅で簡単に使用できる
  2. 吐き出しができない
    乳幼児は使用困難
  1. 乳歯、永久歯に使用
  2. 自宅で簡単に使用可
  3. 吐き出し不要のため、
    乳幼児から高齢者まで
    使用可

Q:歯科医院で塗布する高濃度フッ化物と、家庭で使う歯磨剤(低濃度フッ化物)に違いはありますか?

A:高濃度フッ化物は口腔内にフッ化物を蓄えます。
フッ化カルシウム(CaF₂)を歯の表面に生成し、少しずつフッ化物を放出して低濃度フッ化物と同じように働きます。

高濃度フッ化物の塗布は、9,000ppmの医薬品が使用され、3~4ヶ月毎に歯科医院で行います。歯面に塗布すると、歯質にあるミネラル成分と反応してフッ化カルシウムを生成します。フッ化カルシウムは、虫歯原因菌の産生した酸や食事の影響により口腔内が酸性になると少しずつ溶解しフッ化物として作用します。
これに対して、自宅で使用する低濃度フッ化物は、フッ化物がそのまま口腔内の粘膜や歯垢などに吸着して、エナメル質に直接作用します。
歯科医院の塗布を受け、毎日の歯磨きにフッ化物製剤を使ってもフッ化物過剰摂取の心配はありません。両方を併用すれば、虫歯予防に相乗的効果が期待できます。

Q:フッ化物の安全性は?

A:虫歯予防で使われるフッ化物の濃度は、安全な量です。生体に悪影響を及ぼすものではありません。

フッ化物の中毒症には、大量のフッ化物を一度に摂取した場合に起こる急性中毒と、長期間で比較的高濃度のフッ化物を摂取した場合に起こる慢性中毒があります。

① 急性中毒

3mgF/kg以上のフッ化物を一度に摂取した場合に吐き気などの胃腸障害が起こります。
フッ化物濃度9,000ppmの歯面塗布では、乳歯に1mL(永久歯では2mL)程度を使用するので体重10kgの1歳児がすべて飲み込んでも、0.9mgF/kgの摂取量であり、急性中毒は起こりません。過剰に摂取したフッ化物は、尿から排泄されます。

② 慢性中毒

歯に斑点などができる「歯のフッ素症」が知られていますが、これは歯の形成期に比較的高濃度のフッ化物を継続して摂取した場合に起こる症状です。
海外では、フッ化物が添加された水道水や食塩、ミルクなどに加えて、フッ化物濃度の高い歯磨剤を使用すると総摂取量が多くなり、慢性中毒として問題になる場合があります。
日本では、水道水のフッ化物濃度基準は08ppm以下とされていますので、歯磨剤でフッ化物を使用しても過剰摂取になる心配はありません。

Q:フッ化物で虫歯予防効果を高めるポイントは?

A:乳歯が生えたころから、継続して使用することです。

重要なポイントは2点あります。

① 早期からの使用

乳歯や歯の生え始めの時期は、虫歯になりやすい反面、フッ化物を取り込みやすいので、予防効果を高めるには乳歯が生え始める時期から低濃度のフッ化物の応用を開始することを勧めます。
また、低濃度のフッ化物を早い時期から応用すると、成人後も虫歯になりにくいことが報告されています。

② 継続的な使用の必要性

フッ化物は、歯の表層で起きている脱灰と再石灰化のバランスを保つ働きがあります。さらに、再石灰化を促進するため、フッ化物を継続使用することによって、虫歯予防効果が高まります。時々行うだけではフッ化物が効いていない時間が多くなるため、その効果は薄くなってしまいます。

フッ化物の応用は使用開始年齢が早く、そして長期間継続するほど高い虫歯予防効果が得られることが研究で明らかになっています。継続的なフッ化物の使用とともに、歯科医師や歯科衛生士など専門家の正しい保健指導と適切なアドアイスを成長に応じて受けることも大切です。



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