ステロイド外用剤の強弱の分類と基剤の特徴

公開日: : 最終更新日:2016/06/09 外用薬, 皮膚科

ステロイドの強さは、ストロンゲスト(最強)、ベリーストロング(かなり強力)、ストロング(強力)、マイルド(中等度)、ウィーク(弱い)の5段階に分けられています。
長期連用による局所の副作用に注意し、小児・高齢者・妊婦などは慎重に使用します。
年齢、疾患の重症度、部位に応じ使い分けます。
顔面、頸部、腋窩、陰股部は皮膚が薄く、副作用を生じやすいので、効力の弱いものを用いたり、塗布回数を減らすなど工夫します。
強力なものは多量または長期使用で、皮膚萎縮、口囲皮膚炎、酒さ用皮膚炎などの局所副作用や副腎機能低下などの全身作用が問題になります。

主なステロイド外用薬の分類と使い方

強さ 成分名(濃度) 商品名 一般的な使い方
Ⅰ群
ストロンゲスト
(最強)
最も吸収されやすい成分を使用。含まれる成分量は少ないが、作用が強いため原則として子どもには処方されない。連続使用の場合、大人で1週間以内を目安に。 クロベタゾールプロピオン酸エステル(0.05%)
  • デルモベート
ジフロラゾン酢酸エステル(0.05%)
  • ジフラール
  • ダイアコート
Ⅱ群
ベリーストロング
(かなり強力)
大人では体幹部、子どもでは腕や足など四肢に処方されることが多い。大人の場合、連続使用は1週間以内、子どもの場合は数回に。 モメタゾンフランカルボン酸エステル(0.1%)
  • フルメタ
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(0.05%)
  • アンテベート
フルオシノニド(0.05%)
  • シマロン
  • トプシム
ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(0.064%)
  • リンデロン-DP
ジフルプレドナート(0.05%)
  • マイザー
アムシノニド(0.1%)
  • ビスダーム
ジフルコルトロン吉草酸エステル(0.1%)
  • ネリゾナ
  • テクスメテン
酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(0.1%)
  • パンデル
Ⅲ群
ストロング
(強力)
大人への処方は全身~体幹部限定、子どもの場合は顔や陰部を除く体幹部。連続使用は大人で2週間以内、子どもで1週間以内に。 デプロドンプロピオン酸エステル(0.3%)
  • エクラ―
デキサメタゾンプロピオン酸エステル(0.1%)
  • メサデルム
デキサメタゾン吉草酸エステル(0.12%)
  • ザルックス
  • ボアラ
ベタメタゾン吉草酸エステル(0.12%)
  • リンデロン-V
  • ベトネベート
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(0.025%)
  • プロパデルム
フルオシノロンアセトニド(0.025%)
  • フルコート
Ⅳ群
マイルド
(中等度)
大人・子どもともに、顔を含めた全身に処方される。連続使用は、大人は2週間以内に、子どもは1~2週間以内に。 プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル
  • リドメックス
トリアムシノロンアセトニド(0.1%)
  • レダコート
  • ケナコルト-A
アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(0.1%)
  • アルメタ
クロベタゾン酪酸エステル(0.05%)
  • キンダベート
ヒドロコルチゾン酪酸エステル(0.1%)
  • ロコイド
Ⅴ群
ウィーク
(弱い)
ステロイド成分は体に吸収されにくいものの、含まれる量は多いので安心できない。薬を最も吸収しやすいお尻や陰部にも処方される。連続使用は、大人も子どもも2週間以内に。 プレドニゾロン(0.5%)
  • プレドニゾロン

部位別の使い分け(吸収率の差)

 使用する部位を考慮するのは、薬の吸収が部位によって大きく異なるためです。顔や首など皮膚の薄いところは吸収率が高く、手や足などこ皮膚が厚い部位では低くなります。 

 また、乳幼児は吸収率が高く、高齢者も皮膚が薄くなっているので薬がよく吸収されます。そのため、どちらも弱めの薬を使用します。

ステロイド外用薬の部位別の吸収率

腕の内側の吸収率を1とした場合の各部位の吸収率です。数値が高いほど吸収率が高いことを意味します。

頰(ほお)
13.0
額(ひたい)・首
6.0
3.5
わきの下
3.6
腕の外側
1.1
腕の内側
1.0
手のひら
0.83
背中
1.7
陰部
42.0
足首
0.42
足の裏
0.14

ステロイド薬物療法の基本例

十分な効果が認められない場合はステップアップをし、十分な効果が認められた場合はステップダウンします。最重症時、経口ステロイドを使用する場合は原則として一時入院をし、専門医と連携を取りながら使用します。

軽症

外用薬
保湿・保護を目的とした外用薬
ステロイド外用薬
全年齢:必要に応じてマイルド以下
内服薬
必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬

中程度

外用薬
保湿・保護を目的とした外用薬
ステロイド外用薬
2歳未満:マイルド以下
2~12歳:ストロング以下
13歳以上:ベリーストロング以下
内服薬
必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬

重症

外用薬
保湿・保護を目的とした外用薬
ステロイド外用薬
2歳未満:ストロング以下
2~12歳:ベリーストロング以下
13歳以上:ベリーストロング以下
内服薬
必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬

最重症

外用薬
保湿・保護を目的とした外用薬
ステロイド外用薬
2歳未満:ストロング以下
2~12歳:ベリーストロング以下
13歳以上:ベリーストロング以下
内服薬
必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬
必要に応じて一時的に経口ステロイド
(使用する場合には、入院の上、専門医と連携を取りながら使用する)

外用基剤の特徴

外用剤は基剤と主剤の(薬剤)からなり、基本的には軟膏を用いますが、病変のタイプにより異なる基剤にしたり、皮疹の症状の変化により外用剤を変更します。
外用剤共通の副作用として、刺激、赤み、かゆみなどのかぶれ症状があります。
基剤、主剤いずれもがかぶれの原因となります。
塗布中にかぶれなどの症状が出現した場合は、外用剤を中止し適切な処置をします。

基剤の種類 基剤成分 長所 短所
軟膏
(油脂性基剤)
ワセリンが主
  1. 皮膚保護作用
  2. 肉芽形成を助ける
  3. 皮膚柔軟作用
  4. 安全性、安定性が高い
  1. べとつく
  2. 洗い落としにくい(密着性)
  3. 分泌物の除去作用なし
軟膏
(水溶性基剤)
マクロゴールが主
  1. 水性分泌物の吸収・除去作用大
  2. 皮膚への浸透性が弱い
  3. 水洗性
  1. 皮膚乾燥作用あり
クリーム
(水中油型 O/W型)
親水軟膏・バニシングクリーム
  1. 浸透性大
  2. 目立たない
  3. 塗布感がよい
  4. のびがよい
  5. 水洗性
  1. 皮膚乾燥作用あり
  2. 軟膏より刺激性大
クリーム
(油中水型 W/O型)
吸水軟膏・コールドクリーム
  1. 適浸透性やや大
  2. 適用範囲が広い
  3. 水洗性ややあり
  1. ややべとつく
乳液状ローション 水中油型(O/W型)
水相部分が大
  1. 目立たない
  2. 冷却感
  3. 水洗性
  4. のびがよい
  1. 流れやすく、過量になりやすい
  2. 皮膚乾燥作用あり
  3. 分離することがある
溶液型ローション 溶解液(アルコール類と水が主)
  1. 目立たない
  2. 冷却感、塗布感がよい
  1. 流れやすく、過量になりやすい
  2. 軟膏・クリームより刺激性大
ゾル 粘稠性のある溶解液、コロイド製剤
  1. 目立たない
  2. 軽く塗りやすい
  3. 浸透性大
  4. むだな流出がない
  1. 軟膏・クリームより刺激性大
  2. 乾燥作用あり
ゲル ヒドロゲル網目構造を膨潤させている溶媒が水
  1. 水性分泌物の吸収・除去作用大
  2. 浸透性小
  3. 水洗性
  1. 軟膏・クリームより刺激性大
リオゲル(FAPG)水相を欠く
  1. 浸透性大
  2. 水洗性
  1. 軟膏・クリームより刺激性大
エアロゾル
(スプレー型)
主として水、アルコール類による溶解液の噴霧剤
  1. 広範囲に使用しやすい
  2. 手を汚さず使える
  1. 可燃性
  2. 正常皮膚への拡大散布のおそれ
  3. 投与量の不正確
  4. 大気汚染の心配
テープ ポリエチレンフィルムにステロイドを含有した樹脂粘着剤を使用
  1. ODT効果
  2. 使用に便利
  1. 連用によるかぶれや刺激感、びらんなどの皮膚副作用が懸念
  2. 広範囲に使用しづらい

【水分に対する強さ】軟膏 > クリーム > ローション・ソリューション
【さらさら感】ローション・ソリューション > クリーム > 軟膏
【刺激感(しみやすさ)】ローション・ソリューション > クリーム > 軟膏



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