巻き爪・陥入爪

公開日: : 皮膚科

巻き爪・陥入爪ってなに?

 巻き爪とは、主に親指の爪の両端が「巻く」ように変形した状態のことをいい、10人に1人が巻き爪に悩んでいるといわれています。爪にはもともと巻く性質があり、通常は歩くときに足の指でふんばるため、地面から上向きの力が加わることで爪を平らに保っています。しかし外傷や深爪、合わない靴などによって指や爪を痛めるとと、痛みで力が入れられなくなり、爪への圧力が減って巻き爪になります。巻き爪の原因は、このような状態が続くことによる経年的変化のひとつとしても考える必要があります。また、爪白による爪甲下角質増殖や、遺伝的素因も原因のひとつとして考えられています。

 陥入爪とは、深爪などによって変形した爪の角がトゲのように爪周囲の軟部組織に食い込んで疼痛・炎症をおこした状態です。放置すると、化膿、肉芽組織形成、二次感染と次第に重症化してしまうことがあります。巻き爪と異なり、深爪や体重負荷、靴による影響で足の指に力がかかりすぎることが原因で、若者に多く、特に肥満体型の人や妊婦、足先に力が加わるスポーツを行う人に発症しやすいです。

巻き爪と陥入爪はヒールの高い靴をはく人が多いため女性に多く、さらに高齢者では、「爪の性質が変化して硬くなる」「何らかの障害で足に体重がかけられなくなる」などの理由から、男女を問わず頻度が高まります。高齢者は痛みのために歩行中にバランスを崩して転倒する危険性もあるので早めの対処が必要です。どちらも足の親指に起きやすく、巻き爪・陥入爪が合併することもあります。

巻き爪・陥入爪の予防法

 巻き爪・陥入爪を予防するには、なによりも正しい爪切り、足にあった靴選びが重要です。深爪をしないように、爪がある程度伸びたら、先端を皮膚から1mmほど残して、刃が直線上の爪切りでまっすぐ切るか、爪用のやすりをかけます。靴は爪が圧迫されないように、サイズのあったものを選びます。また、歩幅や歩行速度、姿勢などの見直しも予防・疼痛改善に有効です。

靴選びのチェックポイント
  1. つま先と靴のあいだに余裕があること
  2. 側面や上下から足が圧迫されないこと
  3. 親指と小指のつけ根の部分が靴に当たらないこと
  4. 土踏まずが適度にフィットしていること
  5. くるぶしに靴が触れないこと
  6. 履き口が浅く、脱げやすくないこと
  7. 自分のかかとと靴のカーブが合っていること
  8. ヒールは3cm以下

巻き爪・陥入爪の治療法

 軽症例では、巻き爪・陥入爪の予防法と同じように、爪を伸ばして適切な方法で切れば改善するケースもありますが、改善しない場合の治療法「手術療法」と「保存的治療」があります。かつては手術療法が主流でしたが、末梢神経動脈疾患などのある高齢者などでは血行に不安があるため望ましくないといわれており、最近は爪をそのまま生かした保存的治療が増えてきています。治療法はいずれも単独で行われるだけでなく、症状に応じて適宜組み合わされて行われています。

手術療法

フェノール法

陥没した部分の爪を切除したあと、爪母細胞を約90%の液状フェノールで焼灼し、爪の幅が狭めることで再発を防ぐ方法。痛みは軽い。欠点として、爪の幅が狭くなって見栄えが悪い、残った爪は巻いたままである、フェノールによる焼灼が不十分な場合は爪母から小爪が伸びて再発することがある、などがある。中等症の陥入爪に適応。

フェノール法の手技
  1. 指のつけ根にゴムを巻き、局所麻酔注射をして、爪母とともに爪のふちを切除する。
  2. 切除した部分に爪が生えてこないように爪母に綿棒でフェノールを塗って(綿棒を強く圧抵することが重要)、2~5分待つ。
  3. 無水エタノールと抗生物質入り生理食塩水で洗浄する。
爪母切除術

鬼塚法(病変部の爪甲測縁・爪母・爪床・側爪郭を側骨間靭帯も含め一塊に切除する方法)、児島法(側爪郭下の側骨間靭帯を温存しつつ爪母を切除する方法)などがある。重症例の巻き爪・陥入爪に適応。

保存的治療

肉芽に対する刺激を除去
コットンパッキング法

陥入している爪の先端と皮膚の間に米粒大のコットン(綿花)を挿入し、直接刺入を防ぐ方法。大きすぎると爪が割れて逆効果になるので注意が必要。綿花の代わりにソフラチュールなどを用いてもよい。比較的軽症の巻き爪・陥入爪に適応。

テーピング法

幅1~1.5cm、長さ4cm程度の布製の弾性絆創膏やサージカルテープなど固定性の強いテープを用意し、一方の端を側爪郭で固定し、もう一方を反対側に斜めにひっぱるようにらせん状に回して固定する方法。爪が皮膚に刺入することを防ぐことができる。比較的軽症の巻き爪・陥入爪に適応。

ガター法

爪の長さにあわせて約1cm程度に切った点滴用プラスチックチューブ(直径1.5~2mm)に、縦に溝状の切れ込みを入れ、さらに先端を斜めに切る。陥入した爪に沿わせてチューブを挿入し、アクリル樹脂などで固定する方法。比較的軽症~重症の巻き爪・陥入爪に適応。

肉芽の形成

ステロイド軟膏は収れん作用があり、盛り上がった肉芽を収縮させるために使用する。液体窒素は肉芽組織に圧抵すると、2週間ほど後にかさぶたとなり剥離することが可能。

爪の形を矯正
人工爪法

深爪になった短く食い込んでいる爪や、変形した爪に、アクリルで作製した人工爪(アクリル樹脂とアクリル液を反応させ、爪に塗布し作製)をのせ、爪が伸びて平らになった状態を形作る方法。

爪アイロン法

毛髪用のアイロンの原理を応用して、モスキート鉗子の上刃をアルコールランプなどで熱し、熱くない下刃を爪の下に挿入し、挟んで爪の曲がった部分を平らに伸ばし、液体窒素で冷却、固定する方法。熱による爪のタンパク変性を利用したもので、比較的容易に施行が可能。

炭酸ガスレーザー法

モスキート鉗子で爪をもち上げ、弯曲土を矯正しながら炭酸ガスレーザーを照射し、爪のタンパク質を変性凝固させ平坦に固定する方法。

40%尿素軟膏による夜間密封療法

40%尿素軟膏(尿素40g、精製ラノリン20g、白色ワセリン25g、サラシミツロウ5g、シリカゲルH10gを院内製剤として作成)により、爪の角質内水分保有力を上げ軟化させることで巻き爪の弯曲度を軽減し、疼痛を緩和する方法。

ワイヤー法(超弾性ワイヤー法)

爪の先端に注射針などで穴を開けて、形状記憶合金のワイヤー(マチワイヤ)を通し、ワイヤーがまっすぐに戻ろうとする力で爪の変形を改善する方法。ワイヤーの種類が豊富で、さまざまな硬さの爪に対し適切な矯正力を提供でき、方法がかんたんで短時間で治療を行うことができる。ただし、爪甲遊離縁の幅が1~2mm存在することが必要。

ワイヤー法(VHO法)

VHO(Virtuos Humane Orthonyxie)法はドイツで考案された方法で、金属の細い針金を爪の両脇にひっかけて上にひっぱり、両端をねじり合わせて爪の表面に貼りつける方法。貼りつけには紫外線を当てると固まるジェルネイル用いる。VHO法だと爪に穴を開けずにすみ、ワイヤーが外れたり端が飛び出したりすることも少ないので、皮膚を傷つけるリスクが低い。また、爪の真ん中あたりにかけるため、深爪でもワイヤーをかけやすい。矯正力は弱いが、爪がもろくても施術できる。簡易版製品(コンビペッド)もあり。

ほか、コレクティオなどの製品もあり。

ステンレスプレート法

40~45℃以上の温度で平らになる形状記憶合金製の薄い帯状の金属板(マチプレート)を外科用の接着剤で爪に貼りつけ、ヘアドライヤーで1日1~3回温めることで、爪の弯曲を矯正する方法。爪が柔軟でなければ、この方法での矯正はむずかしい。

B/Sブレイス法(B/S SPANGE法)

特殊なプラスチック製の平らなスプリング板であるB/Sブレイスを接着剤で爪に装着し、その張力を利用して爪の弯曲を矯正し、治癒させる方法。深爪の程度が軽く、爪が柔軟でなければ、この方法での矯正はむずかしい。ステンレスプレート法と類似の方法であるが、より簡便。

クリップ法

形状記憶合金のクリップを爪に装着し、爪の変形を改善する方法。比較的軽症の巻き爪に適応。ドクター・ショール巻き爪用クリップなどの製品がある。

その他

巻き爪プロテクターなどが販売されている。



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