アトピー性皮膚炎の日常生活で注意すること

公開日: : 外用薬, 皮膚科

アトピー性皮膚炎の日常生活の注意点

日常生活の中でアトピー性皮膚炎を悪化させるもの

アトピー性皮膚炎の悪化因子は、個々の患者さんや、各年齢層によっても若干の違いがみられます。乳幼児では、食物が関与している場合があり、それ以降は、ダニ・ハウスダストなどの環境因子が疑われます。

また、すべての年齢層で、強い乾燥、汗、シャンプーや石けん、ひっかくなどの刺激、心理的ストレスなどが悪化因子になることもあります。

悪化因子になりうるもの

  • ひっかくこと
  • 発汗
  • 高すぎる室温
  • 空気の乾燥
  • 高い湿度
  • ほこり、汚れ
  • 衣類の刺激(ケバ立った繊維、かたい繊維)
  • 熱すぎるお風呂
  • 温泉(特に硫黄泉)
  • 石けん、洗剤
  • シャンプー、リンス
  • 動物の毛
  • 植物、花粉
  • 強い日光
  • 心理的緊張、ストレス
  • 不適切な塗り薬の使用
  • 食物(卵、牛乳、大豆、小麦など)

など

掃除は大切

アトピー性皮膚炎では、ダニが悪化因子のひとつとして考えられますが、ダニはほこりの中にいるため、室内にほこりがたまらないようにこまめに掃除し、ほこりの発生を少なくする環境を整えることが大切です。また、ダニの発生しやすいじゅうたん、布製の家具などはできるだけ避け、寝具類の取り扱いにも注意しましょう。また、室内は風通しをよくして、適温、適湿(50%程度)を保つように気をつけましょう。

環境づくりのポイント

  • 適温・適湿を保ち、部屋の換気を心がける
  • 寝室や子ども部屋はていねいに掃除機をかける
  • 晴れた日はふとんを干す
  • エアコンを定期的に掃除する

ペットは飼ってもいい?

犬や猫などのペットは、その毛がアレルギーを引き起こす異物(抗原)になることもあります。また、それらのフケやアカなどをエサとしてダニが増殖する問題もあります。家の中と外を行き来する動物は外から別の抗原(異物)を運んでくる可能性もあります。これらによって、アトピー性皮膚炎が必ずしも悪くなるわけではありませんが、今から飼うことを考えている場合は、やめておくほうが無難です。すでに飼っている場合は、そばにいるとかゆくなるなどあれば、できるだけ家の外で飼うようにしましょう。ただし、ペットがストレスの癒しになっている場合もありますので難しいところです。

体が温まるとかゆみがひどくなる?

温度の変化もかゆみを引き起こす原因のひとつです。体が温まると皮膚の血流が増え、かゆみが強く出ることがあります。部屋を閉め切って暖房をきかせすぎたり、満員電車に乗って汗が出たりするとかゆみが増すことがあるため、できるだけ涼しい環境づくりを心がけましょう。入浴時や就寝時にも体が温まり、強いかゆみが現れる場合があります。お風呂はお湯の温度に注意し、あまり長時間つかって温まりすぎないように、また、入浴後はある程度時間をおいて、体がさめてから寝るとよいでしょう。

入浴時に注意すること

アトピー性皮膚炎の患者さんが数日以上入浴しないと、皮膚についたアカや汚れなどの刺激物や抗原(異物)が原因となって、症状が悪化することがあります。そのため、できるだけ毎日入浴する、またはシャワーを浴びるようにしましょう。また、スポーツなどで汗をかいたあとも入浴やシャワーをおすすめします。お風呂のお湯は熱すぎると、かゆみの原因になるので、心地よく感じる温度に設定しましょう。体を洗うときはナイロンなどのかたい繊維でできたタオルは避け、むやみ強く洗わないように注意し、石けんを十分に泡立ててから、やわらかいガーゼのような布でなでるようにやさしく洗うようにしましょう。洗ったあとは汚れや石けんが残らないようにきれいに洗い流しましょう。入浴後は、できるだけ早めに、炎症をおさえる塗り薬や保湿薬を塗ってスキンケアをしておきましょう。

石けんはどんなものがいい?

入浴時に使う石けんは普通の石けんで問題ありません。ただし、ふつうの石けんでは刺激感があり、症状が悪化してしまうような場合は、低刺激性のものを使うのもひとつの方法です。ちなみに薬用石けんは殺菌目的としているため刺激が強いものもあり、アトピー性皮膚炎の患者さんには適していません。

シャンプーはどんなものがいい?

シャンプーは皮脂の多い頭髪を洗うため、洗浄力が強く、皮膚を刺激することがあります。低刺激のシャンプーを使うほうがよいでしょう。清涼感を出すためにメントールが入っているもの、香料の強いものなどは避けたほうが無難です。また、石けんやシャンプーで洗ったあとは、それらが皮膚に残らないように十分に洗い流しましょう

衣類に関して注意すること

アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が弱くなっているため、さまざまな刺激に敏感になっています。ごわごわした素材やケバ立った起毛の衣類は刺激となり、症状を悪化させてしまうおそれがあるので避けましょう。乳幼児の両親は自分の衣類が子どもの皮膚に触れることも考えて肌触りののよい衣類を着用するようにしましょう。木綿素材が適していますが、木綿100%でも織り方がで肌触りが違いますので、さわってやわらかいものを選んでください。また、買ったばかりの新しい衣類は、繊維の処理のためにさまざまな薬品が使われていることがあるため、着る前に一度洗って、よくすすいでから身につけるようにしましょう。

洗濯するときに注意すること

洗剤として一般に販売されている合成洗剤には、界面活性剤が入っています。また、蛍光剤や漂白剤、タンパク質分解酵素などが加えられている場合があります。これらの物質は皮膚に悪い影響を与えることがあるため、洗剤のすすぎ残しがないように、すすぎをしっかり行うことが大切です。柔軟仕上げ剤や糊は、それを使うことにより、着心地がよくなるのであれば、必ずしも悪いとはいえませんが、皮膚によいか悪いかをしっかりと判断し、注意して使うようにしましょう。

【界面活性剤】水と油を混ぜやすくする物質。洗剤、シャンプー、歯磨き粉などいろいろなものに含まれる。

乳幼児の食事制限は必要?

乳幼児期には、食物でかゆみやじんましんが出たりする患者さんをときどき見かけます。このような食物アレルギーの多くは、乳児期において消化管のアレルギーを防ぐ機能が未熟なために発症しますが、成長するにしたがって軽くなったり、なおったりしてしまうことがほとんどです。また、アトピー性皮膚炎を悪化させる原因になることもありますが、じんましんとして出てくることが多いようです。診断においては、疑わしい食物を見つけ、その食物が本当にアトピー性皮膚炎とかかわっているかを慎重に見極める必要があります。また、たとえ食事制限の必要があるとしても、乳幼児の場合、卵、牛乳、小麦、大豆などの摂取を不用意に制限すると成長を妨げる可能性があります。食事制限は医師がその必要性を慎重に判断し、医師の指導に基づいて注意深く行う必要があります。

林間学校や旅行にいってもいい?

林間学校では汗をかいたり虫にさされたりなど、症状を悪化させる要素があるかもしれません。しかし、普段の生活環境から離れることで転地療法の効果を生み、アトピー性皮膚炎によい影響をおよぼす可能性もあります。症状が極端に悪くなければ、参加するのはよいことです。旅行に出かけるのも同じです。ただし、普段の治療を中断して悪化することのないように、林間学校や旅行中もを持参するようにしましょう。また、海外旅行では行先によって、高温多湿だったり乾燥していたりしますので、現地の気候に合わせたスキンケアが必要です。飛行機やホテルの中は乾燥しやすいので、保湿薬をこまめに塗りましょう。

【転地療法】普段の生活から解放されることにより、免疫機能(抗原(異物)をやっつけようとする体の防御反応)によい効果をもたらし、症状が軽くなること

海やプールに入ってもいい?

アトピー性皮膚炎の症状がひどいときや、全身に広がっているときは避けたほうが無難です。そのようなときは、軽い刺激に対しても皮膚がとても花瓶になっていて、症状が悪化してしまうからです。プールでは消毒薬が、海水浴では塩水が皮膚を刺激します。一方、症状が落ちついているときは、プールも海水浴もかまいません。水泳は子どもなら遊び心を満足させ、立派な骨格をつくり、精神的にも肉体的にもよいスポーツです。

海水浴は転地療法としての効果も考えられています。ただし、泳いだあとは念入りにシャワーを浴び、きちんと洗い流してください。目のまわりもきちんと洗いましょう。

スポーツをしてもいい?

健康を保つためにスポーツをすることはとてもよいことです。適度な運動は体をきたえたり、ストレスを発散させることができるという意味で、アトピー性皮膚炎の患者さんによい効果があります。しかし、激しい運動で汗をかき、そのままにしておくと、症状が悪化することもあるため、すぐにシャワーを浴びて汗や汚れを洗い流すことが必要です。汗や汚れがアトピー性皮膚炎の悪化因子になることを忘れずに、そのあとの対応に注意していれば、スポーツをして汗をかくことはすばらしいことです。

冷水や寒風摩擦は皮膚にいい?

民間療法のひとつに冷水寒風摩擦などで皮膚をきたえるというものがあります。しかし、アトピー性皮膚炎は皮膚に炎症がある病気で、皮膚が弱くなっています。冷水も寒風摩擦も皮膚に過剰な刺激を与えるため、よくありません。症状のあるところをこすれば確実に悪化し、症状のないところもこすりすぎることで症状が出てきてしまう可能性があります。

心理的ストレス

アトピー性皮膚炎はストレスで悪化する?

心理的ストレスはアトピー性皮膚炎の症状と深く関係していて、重要な悪化因子のひとつとして考えられています。環境の変化、クラスがえ、試験、家族や友だち、周囲の人との人間関係のトラブルなどで心理的ストレスがたまると、それに反応してホルモンが分泌され、アレルギー反応を起こしやすくなると考えられています。

したがって、なるべくストレスをためないように、自分なりのストレス解消法を身につけることが大切です。また、規則正しい生活睡眠時間をたっぷりとる、疲れたときは休養するといった生活習慣も心がけましょう。

かくのをどうしたらやめられる?

かゆみをとるためではなく、ストレ解消などの目的で異常にかいてしまうことを「嗜癖的掻破行動(しへきてきそうはこうどう)」と呼んでいます。嗜癖とは、心理的、肉体的ストレスをまぎらわせるために、ある行為にふけり、やめられなくなって、結果としてその行動が身体に害を及ぼすことです。どうしてもかくのがやめられない人は、毎日かゆみを感じた回数、ひっかきの程度などを日記に書き、1日に何回、どんなときになぜかいてしまうのかを分析することをおすすめします。日記をつけることにより、ストレスなどがアトピー性皮膚炎の症状と関連していることに気づくことがあります。また、ストレスを解消する方法を探すことも大切です。

どうしてもかゆいとき

患部を冷やすとかゆみがおさまることがあります。冷やすことでかゆみ刺激を伝える神経のはたらきや血行をおさえられるので、かゆみ物質が拡散されにくくなります。

またかゆみを感じたら、体を適度に動かす、かゆいところを押さえる、保湿剤を塗るなど、ほかのことに意識を向けることもおすすめです。



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